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2026/9/8

変革を担う5つの現場—各団体ショートプレゼン【2026年2月17日開催「社会変革人材フォーラム」レポート②】 

    青山社中、パブリックミーツイノベーション、スマートシティインスティテュート、福岡地域戦略推進協議会(FDC)、プロトタイプ政策研究所の5団体が共催した「5団体連携イベント」(2026年2月17日)では、全体の司会進行と小泉誠氏(FDCフェロー・当研究所研究会メンバー)による話題提供に続き、5団体がそれぞれの活動を紹介するショートプレゼンテーションを行いました。本記事はその議事録(要旨)です。また、本議事録に記載されている情報等はイベント開催時(2026年2月17日)現在のものです。

    ▼本イベントの詳細は以下からご覧ください

    https://policy-ri.jp/news/260217_event

    青山社中(朝比奈氏)

    朝比奈 本日のキーワードは変革とコミュニティであり、自分の言葉でいえば「始動力」だ。リーダーシップは日本語で「指導力」と訳されることが多いが、しっくりこない。日本語で表現するなら「始動力」と「コミュニティをどうつくるか」が重要だと考えている。

    経済産業省に14年ほど在籍していた経験からいうと、現在の高市政権には変革力とコミュニティの両方がある程度備わっているように見える。官邸には経産省出身者が多く、過去30年の反省と失敗を踏まえて相当踏み込んだ改革をしようとしている。うまくいくかは未知数だが、変革人材を育て、コミュニティで束になって進めようという動きがある。

    青山社中でも、リーダーを育てるリーダー塾や公共政策学校を運営しており、変革とコミュニティという文脈でいくつかの実例が生まれている。霞が関改革に携わっていた頃のメンバーや、ハーバード・ケネディスクールの同窓会なども含め、変革をともにする人材とコミュニティが今後の鍵になる。

    ハーバード・ケネディスクールで学んでいた当時、リーダーシップにはまったく関心がなかったが、エズラ・ボーゲル氏らと親交を得た機会でもあった。当時の看板教授だったロナルド・ハイフェッツの理論をあえて乱暴にいえば「アダプティブリーダーシップ」であると思う。ただし、「アダプティブリーダーシップ」は日本語には訳しにくい。「適応的リーダーシップ」といってもわかりにくいため、その対義語であるテクニカルリーダーシップから考えると理解しやすい。

    テクニカルとは医師的なアプローチであり、胃が悪ければ胃薬、心臓が悪ければ心臓病の薬というように対症療法的だ。一方アダプティブは、毎日運動する、食事の時間を見直すといった体質改善的なアプローチであり、薬を飲むより実行が難しい。漢方薬と西洋医学の違いに近い。

    アダプティブなアプローチは重要だが、乱暴にいえば政治はあまり日本を変えられない。マーケットや国民からの財政規律・減税・防衛費増額といった圧力に応える政治は基本的にテクニカルアプローチにとどまらざるを得ない。日本を大きく成長させ社会を良くしていくアダプティブなアプローチは技術論に終始しては実現できず、だからこそ自分にできるアダプティブアプローチとしてリーダー塾を運営し、人材を育てている。

    通常の塾が「公務員になれます」「英語力が伸びます」といったテクニカルなアプローチを掲げるのに対し、青山社中のリーダー塾では「何が手に入るのか」という問い自体が成立しない。1年間の集中講義だが、リーダーシップを学ぶというよりも、答えを明示せず、自分で考えてもらうことが重要だと思っている。

    かつて日本は「勉強」ではなく「学問」をしていた。学問とは問いを学ぶことであり、いつから答えを学ぶ「勉強」に変わったのかを問い直したい。リーダー塾はもう一度学問をする場だ。歴史は繰り返さないが韻を踏むといわれるように、江戸時代の松下村塾や札幌農学校のクラーク博士の教育とも通じるところがある。

    リーダー塾は政治家だけでなくビジネスパーソンも多く学んでおり、例えば某ビジネスホテルの社長で女性支配人比率89%を実現した人物なども輩出している。様々な分野でリーダーシップが発揮される場になっている。

    我々の活動の柱は教育、地域、政策づくり、そして日本と世界のつながりの4つであり、これが今の日本社会を良くするアダプティブアプローチだと考えている。

    パブリックミーツイノベーション(石山氏)

    石山 パブリックミーツイノベーション(PMI)を運営している。新卒でリクルートに入社後、クラウドワークスの経営企画でIR業務に携わる中で業界団体との折衝を担うようになった。ライドシェアや民泊などスタートアップが新しいイノベーションを生む一方で様々な規制に直面する状況の中、スタートアップの経営者自身がルールメイキングに関与できていないという課題意識を持った。

    官僚でも弁護士でもない自分自身がどうルールメイキングに関わればよいのかという課題感もあった。ほとんどのスタートアップにはロビイング人材がゼロという現状があり、この領域に人を増やすため、PMIではルールメイキングを学ぶ学校事業や、官僚と民間をつなぐ事業を行っている。広報やマーケティングの教科書は書店に並ぶが、ルールメイキングの教科書はほとんどなく、政治家や霞が関との交渉、メディアを通じた世論形成のノウハウは属人化している。社会を変えたいと考える人が誰でも学べる市場をつくりたいというのがPMI立ち上げの動機だ。

    現在、特に40歳以下のイノベーションリーダーに重点を置いたスクールを展開している。また、資本主義や民主主義とは何かという根本から柔軟に考えられる国家公務員も必要と考え、コミュニティ事業も行っている。さらに、クライアントワークを行わない公平中立なシンクタンクが日本には少なく資金も集まりにくいという課題感、シルバー民主主義の中で若者の声を政策に反映するシンクタンクが存在しないという課題感から、シンクタンク事業も運営している。

    2026年5月には、より踏み込んだ半年間の実践プログラム「PMIルールメイキングアカデミー」を開始する予定だ。コロナ禍に始まり4期で約400名の卒業生を輩出してきたスクールを、フィールドワークやディスカッションを強化した内容に発展させる。政策形成プロセスや永田町の論理を民間のビジネスパーソンが知る機会はほとんどなく、これを民主化していきたい。

    スマートシティインスティテュート(工藤氏・南雲氏)

    工藤 スマートシティインスティテュートは、スマートシティとウェルビーイング指標を強みとし、住民のウェルビーイング向上を目標に掲げている。設立された約7年前、スマートシティはバズワードで、ドローン・アプリ・地域通貨といった華やかな取り組みが目立った時代だった。当団体は日本経済新聞社と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが立ち上げ、会員向けアンケートを実施したところ、各自治体から「市民参加」というキーワードが挙がり、日本のスマートシティでは市民参加が中心部分で欠落しているという結果が出た。デジタル連携基盤の構築やマネタイズが進まないという課題も見えた。

    こうした課題意識のもと、代表理事の南雲が市民とデジタルをつなぐという問題意識から文献調査等を重ね、ウェルビーイング指標を構築し、まちづくりの政策デザインに活用する研修プログラムを整備してきた。

    ウェルビーイング指標は主観データのアンケート調査とオープンデータを組み合わせ、因子ごとに偏差値の形で数値化することで、街の強み・課題を可視化するものだ。当初24団体だった活用団体は、2026年1月時点で244団体まで拡大しており、北海道、静岡県、和歌山県などで活用が多い。

    研修プログラムはOASIS研修とシティリージョンマッププログラムの2体系からなる。シティリージョンマッププログラムは4年間継続しており、2026年2月上旬には第4回の修了式を終え、延べ修了者は213名(民間、省庁、自治体、学生など)にのぼる。

    OASIS研修は6プログラムからなり、政策デザインと指標・システムデザインのダブルループを回す形で実施しており、延べ修了者は658名だ。

    新たに、オンラインプログラム「ウェルビーイングシティビジョン」と、2年間のマスタープログラム「ヒューマンランドスケープゼミ」の2つを立ち上げようとしている。

    日本経済新聞社と連携し、大手町の日経ホールでの政策提言やオンライン・紙面での発信も行っている。海外では、スペイン・バルセロナのスマートシティエキスポで4年連続ジャパンパビリオンを主催し、国土交通省のPLATEAUなど日本のスマートシティの取り組みを発信している。

    福岡地域戦略推進協議会(片田江氏)

    片田江 冒頭、フェローの小泉が人材プロジェクトで議論してきた内容と示唆を紹介したが、その前提としてFDCがどのような団体で、どのような狙いと位置づけで人材プロジェクトに取り組んできたかを紹介したい。

    FDCは正式名称を福岡地域戦略推進協議会といい、福岡地域の戦略を立て、実現まで一貫して行う産官学民一体のThink&Doタンクを標榜している。福岡市を中心とする17市町が国際競争力を強化し、グローバル化の中で存在感を発揮できるよう、産学官が一体となって戦略を実行に移し、九州・日本の発展に貢献することを目的として設立された。会員組織であり、行政・企業・大学・市民など約240の会員が参画している。

    福岡は東アジアとの距離の近さをポテンシャルとし、東アジアのビジネスハブとなる地域の将来像を掲げ、行政・企業・会員とともに必要なアクションを実行している。

    具体的には、会員が主体となって事業を生み出すプラットフォームとして、産学官民で取り組むべき地域 の方向性を定める部会と、民間事業を個別に支援するFLaP(フラップ)の2つの軸で、ビジネス開発と地域成長を目指す場づくりを行っている。まちづくりのソフト・ハード両面や福岡のポジショニングの検討から、実証・研究の場の提供、個別の民間事業の事業化支援まで担っており、単独の企業では取り組みにくい挑戦を「福岡地域」という主語のもとで可能にしている。

    FDCが果たしたい役割はリエゾンだ。産学官民、特に官と民では意思決定プロセスも目標設定もコミットメントも時間軸も異なるが、これをアセスメントし意思疎通を促すことで官の投資と民の投資を連動させ、少ないリソースでも新たな活力を生むビジネスの橋渡しを目指している。FDCが翻訳のような役割で情報・ナレッジをつなぎ円滑なコミュニケーションを生むことで、価値の増幅・向上や多様性の確保につなげ、福岡の東アジアビジネスハブという地域戦略を実行に移していく。

    ビジネスエコシステムの充実には人材が不可欠であるという観点から、2025年度は、人材プロジェクトを立ち上げ半年間議論してきた。福岡地域として必要な人材像のコンセンサスを得ることに加え、日本全体で起きている社会・産業構造の変化への答えを福岡なりに導き出せれば、それ自体が福岡の競争力になるという狙いもあった。

    議論の結論は小泉が紹介した通りだが、半年間にわたり有識者から人材を考える視点・論点を得て、まとめたものだ。今後は日本全体への発信と並行し、福岡としての人材確保・育成の仕組みづくりを検討していきたい。

    マクロの視点、マクロとミクロをつなぐ視点をどう関係づけて解くかという議論の中で、FDCがリエゾンとして持つ機能の新しい価値を実感するとともに、部会やFLaPという事業創出のプラットフォームがプレイグラウンドとしての可能性を秘めていると感じている。FDCのプラットフォームを一層生かし、福岡の競争力を高める人材の取り組みを進めていきたい。

    プロトタイプ政策研究所(落合氏)

    落合 当研究所は本日紹介のあった各団体と比べると2022年設立と活動歴は浅いものの、本日登壇の各団体は、人材育成、ルールメイキング、社会実装、地域での実践など、それぞれの形で社会変革に取り組む団体だ。

    各団体とは以前から関係があり、青山社中からは朝比奈氏、パブリックミーツイノベーションからは本日欠席のもう1名の代表理事である南氏、スマートシティインスティテュートからは南雲氏、FDCからは片田江氏に、それぞれ当研究所の有識者メンバーとして参画いただいている。小泉氏は当研究所設立のきっかけとなった人物であり、経済産業省時代に主宰していた検討会のメンバーがあまりに有意義な検討ができ、解散させるのはもったいないという発想から研究所が生まれた。小泉氏がクロス人材について語っていたが、自分にとって小泉氏自身が大きなクロス人材だった。本日イベントに参加している日本総合研究所の東氏も、気づけば研究所メンバーとして活躍している。

    政策提言活動については、技術や社会構造の変化を踏まえると、「学術的にこれが良い制度だ」、「規制改革を対決型で進める」、「事前規制から事後規制へ」、といった理論的な言葉だけでは物事は動かないと実感してきた。本日午前も別の研究所メンバーとNBL誌で、法令の解釈が不明確に場合の事業活動が経営判断として法律上許容されるかという議論を行っていたが、目の前の当事者が「この制度なら動いてもよい」「この論点なら議論してもよい」と腹落ちして初めて議論が前に進む。90年代・2000年代・2010年代の規制改革を担った先輩方の話を聞いてきたが、それだけでは十分でないと考え、実務的にどう進めるかを模索してきた。

    供給制約社会における規制改革の考え方や、EBPMの促進など政策形成に関する意見を発信してきており、2026年2月中に調整がつけば国際標準化と規制改革についても発信する予定だ。規制改革は「言われてやらされる」形では動かず、DXやGXも同様で、お題目として押し付けられると当事者は動かない。合理的なものだと自ら見出してもらうことが重要であり、現政権のもとで成長戦略と規制・政策をつなぐ議論を用意しているところだ。

    こうした議論は直近では地域でも行っており、日本総研の東氏らと札幌や福岡で議論を重ねてきた。議論を突き詰めると、変革はルールの話だけでなく組織や人が変わらなければ実現しないという結論にたどり着く。総理へのペーパーでも規制改革を論じたつもりが、後段では公務員制度改革の話になっていた。組織や人が変わらなければ良い取り組みにはならないと考え、学生向けの人材教育として京都大学や東京大学でワークショップを行っている。また京都大学の稲谷氏とともにAIを開発し人工知能学会に提出するなど、法律事務所らしくない取り組みも面白いと考えて進めている。

    制度やルールの議論から始まったが、実装を進めるには地域からのアプローチが有効だと考え、FDCなど各地域の関係者と議論を重ねてきた。変えていく中心にあるのはルールやお題目ではなく人であり、小泉氏が福岡で進めている取り組みに全面的に協力したいという思いから、本日の企画に至った。

    この記事に関連する研究会メンバー及び研究員

    その他の参加者


    工藤一成氏(スマートシティインスティテュート専務理事)

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