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2026/8/28

組織と人材の「共犯関係」を解く —アダプティブトランスフォーメーションという視点 【2026年2月17日開催「社会変革人材フォーラム」レポート①】 

    青山社中、パブリックミーツイノベーション、スマートシティインスティテュート、福岡地域戦略推進協議会(FDC)、プロトタイプ政策研究所の5団体は、2026年2月17日に『ルールメイキング・公民連携のリーダーが集結 「社会変革人材フォーラム」」を開催しました。同イベントでは、FDCフェローでありプロトタイプ政策研究所の研究会メンバーでもある小泉誠氏が全体の司会進行を務め、人材と組織の変革をテーマに話題提供を行いました。本記事は、小泉誠氏による話題提供の議事録(要旨)です。

    ▼本イベントの詳細は以下からご覧ください(動画)

    https://youtu.be/rt9K4CtVK8g?si=mjUwIEU7B0Qi7sjg


    <本イベントの第二弾を9月8日に開催>

    「AI時代の公共政策には、どんな人材や能力が求められるのか」をテーマに議論いたします。詳細は以下からご覧ください。

    AI時代の公共政策〜どんな人材や能力が求められるか〜 | Peatix


    「アダプティブトランスフォーメーション」-組織と人材はどう変われるか

    小泉誠氏が、福岡地域戦略推進協議会(FDC)で進めてきた「人材2030」プロジェクトの知見をもとに、組織と人材の変革について話題提供しました。

    FDCの人材2030プロジェクトは2025年7月から約半年間取り組んできたものである。そこで何をやったかよりも、何がわかってきたかを共有したい。DXやGXに続くもう1つのXが必要であり、これをAX(アダプティブトランスフォーメーション)と呼んでいる。

    未来人材会議などでは、2030年・2040年に社会構造が大きく変わるタイミングだとたびたび指摘されている。2025年は、後年2030年問題を総括する際に1つの変曲点だったと振り返られる年になるだろう。生成AI、グリーン、量子技術(政府は2030年までに量子技術利用者1000万人を掲げる)のいずれもがそうであり、この5年間を1つの移行期と捉えることを提案したい。

    「○○人材が何年までに何万人不足する」という議論は珍しくなく、産業機会に対する不足人材の検討自体が誤りというわけではない。ただし、今が変曲点であり未来が非連続に変わっていくという前提に立ったとき何をすべきかは、ほとんど語られてこなかった。人材論では顕在化した「不足」が注目されがちだが、その裏側にある部分(上図の赤のゾーン)にあえて注目するプロジェクトが人材2030である。

    変革が停滞する理由——組織と人材の共犯関係

    変革がなぜ停滞するのかを一言でいえば、「組織と人材の共犯関係」にある。金融危機以降、日本企業はガバナンスを強化してきたと言える。マネジメントは本来「やりくり」を意味し、臨機応変な対応も含むはずだが、日本ではその目的が管理偏重になっていることが多く見受けられる。こうしたマネジメントのもとでは、人材の側も正解を求めすぎるようになる。両者が二重の構造で締めつけ合い、デッドロックが生まれている。

    その背景には3つの構造変化がある。第一にデジタル化、第二に供給制約社会への移行、第三に組織の液状化である。人口が増える時代は需要も増えるため、足りないものを埋めることが産業機会になったが、人口が減る社会では、やりくりを高度化し、1つの業界にとどまらず「つなげて」解く必要がある。組織の液状化とは、組織が強固でそれに準じた人材が必要とされていた状態から、組織自体の境界が曖昧になりつつある状態への変化であり、すでに始まっている。

    こうした3つの構造変化により、かつて社会を支えていた垂直的・硬直的なタテ型の社会システムが崩れる中でデッドロックが発生し、不安からさらにその関係は強まり、変革が停滞している。これはヒアリングした関係者の多くが共通して指摘することでありながらも、では何をすべきか、が依然として難しい。

    AI Questが示した「アダプテーション」

    その一つの解が、変革(X)へ向けて探索し続ける組織と人材をつくるアダプティブトランスフォーメーション(AX)である。これは、経済産業省で行っていたAI人材育成プロジェクト「AI Quest」から見えてきたものである。

    AI Questは3年間続き、後継事業も含めると7年ほど続いている。年間3000人規模をフルオンラインで実践的なデジタル人材として育成するプロジェクトで、特徴は「先生ゼロ」である。1期目は先生がいる状態でケーススタディを実施したが、参加者が正解を求めて講師に依存し、回答が似通って非連続な発想が出にくくなった。これは変革を停滞させる病理と酷似していた。2期目・3期目はフルオンラインのプロジェクトベースラーニングに切り替えたところ、学習効果・育成効率とも高まり、何より参加者の熱量が大きく変わった。

    先生なし・正解なし・教えないという環境とコミュニティ、良質な教材を用意したところ、プログラミング未経験者どうしが教え合う中でDX人材が育ち、企業を横断した仲間との越境・協力が当たり前になった。チームとしてできるかどうかではなく、自ら仲間を共創していくことが普通になり、その中から起業する参加者も現れた。

    ここで起きていたのは変革の運動であり、その本質は「環境様式による行動様式の書き換え」である。誰かに命令されたわけではなく、状況を見て自ら役割を変え、連携して動く。環境の変化に対して自ら動きを変える機動的な動きに、「アダプテーション」という名前を付けた。日本語の「適応」「順応」とはニュアンスが異なるため、あえて英語のまま用いている。AI Questは結果的に、変革を進める組織と人のあり方を示していたのだ。

    アダプテーションを生み出す要素は2つある。1つは「アブストラクション」、すなわち少し先の理想を描くことである。非連続な反実仮想、つまり今はできないがこの問題を解くにはどうすればよいかを思い描く。もう1つは、それを実際にアドプト(採用)し、やってみることである。やってみれば失敗するので、また修正する。このプロセスは「半径5メートルのリーダーシップ」と言い換えられる。ここでいうリーダーとは職責上のリーダーに限らず、フォロワーやフォロワーにとってのリーダー、「やってみよう」というマインドを持つ人を指す。それが組織内で連鎖していくことこそがアダプティブトランスフォーメーションである。

    アダプテーションを支える2つの仕掛け——プレイグラウンドとクロス人材

    AXを進めるには2つの要素が必要になる。1つは、人を育てる場としての「プレイグラウンド」である。公園のように外側の安全設計はしっかりしているが、中の遊具をどう使うかというルールは定めない。自由度は高く、最初は皆戸惑うが、徐々に自分でやり始めると手触りが出てきて、知恵を共有し合いながら公園で遊ぶ子どものような状態になっていく。

    もう1つは「クロス人材」である。変革人材だけでは変革は絶対にうまくいかない。AI Questの参加者もむしろクロス人材に近い人材が育っていたプロジェクトだった。クロス人材とは、共鳴して増幅させる触媒のような人である。変革人材(ありたい姿を強く描き行動に移す人)が描く未来に共鳴しながら現場の人をつなぐ、翻訳・調整の機能を担う。これまでのタテ型の組織や社会では目立たず評価されにくいが、チームを強くするうえで不可欠な人材である。

    福岡地域に照らすと、規制改革特区をはじめ様々なプロジェクトを実現してきた地域という評価がある一方、その水面下でどのような能力が働いているのかを明らかにする価値があると考えている。こうした能力を福岡地域でどう計測・可視化・定義し、育成的な状況をつくれるかを、実際のプロジェクトで検証していきたい。クロス人材の能力はネットワークの中でしか見出しにくく、地域の中でそうした人材が集まりコミュニティやプロジェクトを形成し、互いに評価し合う中でさらに高められ、実際のプロジェクトへとつながっていく仕組みを構想している。

    課題となるのは組織や地域における意思決定・ガバナンスであり、既存の組織や地域の論理の枠内にとどまっていては実現が難しいため、別の方法を模索する必要がある。近しい問題意識を持って活動してきた本日の5団体と、この話題を共有し議論したいというのが本日の趣旨である。

    ※ 本記事は5団体連携イベントでの議論の要旨であり、逐語の記録ではありません。専門用語・固有名詞は原則として発言のまま用いつつ、読みやすさのために趣旨を損なわない範囲で整理しています。

    また、内容の完全版は以下の動画でご確認いただけます。


    <本イベントの第二弾を9月8日に開催>

    「AI時代の公共政策には、どんな人材や能力が求められるのか」をテーマに議論いたします。詳細は以下からご覧ください。

    AI時代の公共政策〜どんな人材や能力が求められるか〜 | Peatix

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