プロトタイプ制作研究所ロゴ

News

ニュース

  • 活動報告

2023/12/28

2023年全体会合の報告

    2023年も終わりを迎えようとしています。今年も各分野で活躍したプロトタイプ政策研究所の専門家たちが知識と洞察を共有し、未来へのビジョンを描くために一堂に集結しました。

    この記事に関連する研究会メンバー及び研究員

    ※順不同、敬称略

    その他の参加者

    ※順不同、敬称略

    新舎千恵(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士/パートナー)

    2023年度の活動の振り返りと今後注力したいポイント 

    瀧俊雄
    銀行データを第三者に繋ぐ電代業が本業だが、今年の7割ほどはデジタル行財政改革など、委員や構成員としての活動に従事し、濃い1年間だった。今年は特にEBPMの専門家としての活動も加わった。

    クロサカタツヤ
    情報の来歴の検証により真正性を高める「オリジネーター・プロファイル」の開発・普及、放送政策、電波政策、AI政策等、様々な検討に携わってきた。。来年は様々な分野の業界再編が進み、生成AIを含めたAI政策も大きく動くだろう。

    小泉誠
    デジタルリテラシー協議会を通して人材育成や、本研究所で労働市場改革に関する提言を行った。最近はデジタル人材に加えて、グリーントランスフォーメーション人材の標準を進めている。来年度も引き続き取り組む予定。

    小島武仁
    経済学のマーケットデザインが専門分野で、人やモノのマッチングについて研究している。今年は、研究だけでなく、社会実装まで少し進んだ。来年度は社会実装チームを作り、フィードバックを踏まえて進めたい。。

    白坂成功
    今年の主な取り組みとしては、宇宙基本計画の改定をして、JAXA基金を作った。宇宙技術戦略というものを初めて日本政府が作っているところで、その取り組みが印象深い。デジタルライフライン全国総合整備計画のアーキテクチャについても設計したり、GX基金についてヒアリングを実施したりと、濃い1年間だった。GXやデジタルは先端分野で、色々なことが起こり面白いと感じている。

    羽深宏樹
    京都大学を拠点にアジャイルガバナンスの実装に関する研究を行いつつ、スマートガバナンスという会社で具体的な企業のプロジェクトも支援している。今年は日本のAIガバナンスを世界に伝える論文を公表し、世界から反響を得ると共に、AIガバナンスの全体像を解説した新書『AIガバナンス入門』も公刊した。

    渡部友一郎
    日本の国際競争力をあげることがミッション。日本の法務部門のポテンシャルをさらに引き出すために活動している。2023年は、Airbnbで学んだ『リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)の公刊というマイルストンとなった1年であった。

    東博暢
    まちづくり・スマートシティ全般に携わっており、今は地域の現場に入り込んでいる。ラピダス進出やデータセンター建設が決定した苫小牧市のアドバイザーを務めているが、東京との政策連携が必要であると考えている。大学改革についても力を入れており、今後はプロト研とも連携して大阪公立大学の全般の改革を進めながら新たな大学の在り方を示していきたい。

    成原慧
    ボストンにて個人情報保護やプライバシーについて研究を行っている。

    朝比奈一郎
    主に、①日本の活性化・人材育成、②地域の活性化、③政治を変えるための政党作りや政治家のクライアントづくり、④日本と世界を繋ぐことの4つに力を入れている。今年は神戸市にも関与。未来の農業を考える勉強会も実施。

    松下外
    主要分野はAI・データや知的財産に関する法律業務。本年度は経済産業省の蓄電池(CFP)関連プラットフォームの利用規約作成に関する委員に就任。

    小泉美香
    今年から慶應SFCでジェンダーについての講義をしており、履修希望者は800名以上。選択的夫婦別姓についてアンケートを実施したところ、9割の学生が支持していたが、政治の世界を見ると若い人の意見と乖離があるように思う。若い人が政治参加できるようにすることが今後のミッション。

    南雲岳彦
    スマートシティに注力し、規制改革推進会議に4年間携わっていた。4年前に一般社団法人を立ち上げ、産官学民のエコシステムを運営している。デジタル田園都市国家構想下で活用中のウェルビーイング指標を作ってきた。現在、60自治体が導入し、100自治体が検討中。国連におけるグローバルQoL指標策定プロジェクトにも参画している。日本からウェルビーイング指標を世界に展開していきたい。

    吉井弘和
    マッキンゼー、厚労省での勤務経験があり、現在はVOLVE株式会社の経営をしながら慶應SFCで准教授に就いている。高学歴人材の流動性向上を目指して活動している。

    前田恵美
    元弁護士で消費者庁個人情報保護推進室に任期付き公務員として所属中に個人情報保護法の改正等に関与。任期満了後、Googleの公共政策部にて勤務した後、現在、世界経済フォーラムでスマートシティ担当となった。

    提言についての議論

    ●「イノベーション推進のためのグレーゾーン・新領域への取組に資する法・社会基盤に関する提言」(2023年12月15日公表。提言はこちら

    社会の様々なインフラが当たり前にデジタルとなってきた。こうした中で、現状の法制度では対応しきれない、「グレーゾーン」といわれる領域が生まれている。この提言は、「グレーゾーン」を危惧しつつも、イノベーションを積極的に起こすよう、網羅的な制度作りを提言するものである。

    全体会議では次のような議論が交わされた(下記は議論の抜粋)。

    • 規制改革への取組み方としては、法律の中に細かなところを書き込んでも仕方がなく、その道の専門家が集まってトライアンドエラーで制度をアジャストしていくという方向が良いのではないか(羽深

    • 2020年にISOの新しい規格が発行した(ISO31022:2020)。その中でリーガルリスクマネジメントが盛り込まれている。これをどう日本で広く広めていくかが重要(渡部

    • 厳格責任に免責を含めて様々条件を含めていくと、そもそも厳格責任の対象なのかという議論の呼び水となり、ひいてはサイバーフィジカルシステムの硬直化をブレイクしていくとっかかりになるかもしれない。受託者責任(フィデューシャリーデューティ)を含めて、誰がどのような責任を負うべきか、法制度と契約をどのように位置づけるべきかを考える重要な手がかりではないか(クロサカ

    • グレーゾーンは極力なくしたほうが良いが、イノベーションをより喚起させるっためには、ある程度グレーゾーンがあってもリスクを取って踏み出すということが重要で、その普及啓発が大切。日本の停滞は、こちらが主因にも思えるので、車の両輪的に規制改革などの結果・状況をプロボカティブにアナウンスしていくことも重要と思う。(朝比奈

    ●「(仮)個人情報保護法における同意の意義とリスク管理枠組み整備の必要性に関する提言」(近日公表予定)

    個人情報保護法は、目的外利用・第三者提供を中心に、本人同意による枠組みを置いてきた。しかし現在、この本人同意に基づく枠組みゆえ個人情報が利用できず、本来有用な事業、サービスの提供が滞るという事態が顕在化している。この提言は、本人同意に代わる新たな本人保護手法の整備に向けて議論を提起するものである。

    全体会議では次のような議論が交わされた(下記は議論の抜粋)。

    • かなり細かいところまで同意をとらないといけないということにもなっており、同意疲れが問題視されている国もある(前田)

    • 企業の側からすると、同意をとっておくことが正当性、明確性の確保につながっている面もある。同意をリスクベースに組み替えるとすると規制の客観性や明確性をどのように確保するのか。また、リスクといっても、配慮しないといけないリスクは多岐にわたるので、いかなるリスクをどこまで・どのように考慮する必要があるのか検討・整理する必要があるのではないか(成原

    • 「同意」は質問の仕方でかなり回答が変わる。質問内容を含めての議論が重要と考える。(朝比奈

    研究員より

    副所長・谷崎研一
     全体会では、プロトタイプ政策研究所において提言(案)としてまとめられていた複数のテーマ(グレーゾーン領域への取組に資する法・社会的基盤、個人情報保護における同意取得の在り方)について、様々な視点から議論された。いずれのテーマも、横断的な社会課題に対して複合的な視点から議論し、指針・民間におけるルール形成を提言しようとするプロトタイプ政策研究所において取り扱うテーマとしてふさわしいものであったと自負している。とりわけ、個人情報保護における同意取得のあり方を巡る議論は、ややもすれば同意偏重に陥りがちな日本の個人情報保護法制に対して、その根本的な制度設計について問題を投げかけるものであったと考えている。いわゆる情報の利活用の重要性の論拠には枚挙に暇がないが、他方で個人情報保護の必要性も高く、その折り合いをどこでつけるのかは非常に難解なテーマであり、また、広く議論されるべきテーマである。例えば、為替取引分析業において、委託元金融機関における為替取引分析にかかる作業の共同化により、日本の金融業界の透明性と信頼性が高まり、より高度なAML/CFTの実施が期待されることになるが、他方で、同為替取引分析業者に対して個人情報が提供される場合、その提供される個人情報の提供主体から同意を取得するということは現実的には困難であることも想定される。とりわけ金融分野における情報利活用については、ハードルが高い面があるものの、リスクベースの考え方により、より公益性の高いAML/CFTの精度が高まることが期待される。同意取得の規制の在り方については、引き続き重要なテーマであると認識しており、継続してフォローしていきたいと考えている。

    主任研究員・表大祐
     プロトタイプ政策研究所が設立されて1年が経ちました。今年度は、研究所に参画いただいている有識者メンバーの方々がさらに増え、より幅広い分野を一層分厚く研究できるようになりました。全体会合の議論を拝聴していて、研究所の活動が大きく広がったことを実感しています。
     個人的に特に関心が高く印象に残ったのは、グレーゾーン・新領域への取り組みに資する法・社会基盤に関する議論です。自分自身素案の作成に従事し、思い入れが深いテーマゆえでもあります。全体会合やこれまでの小会合は、有識者メンバーの方々の一人一人が、グレーゾーン・新領域に果敢に挑む事業者の悩みに正面から向き合い、様々な角度から多くの意見を積み重ねており、提言ができあがるまで終始、活気に満ち溢れておりました。本テーマに関する法・社会の在り方や、弁護士としての向き合い方につき、大きく見直す機会となりました。今後とも、イノベーションに熱意をもって取り組む多くの方々を支えることができるように尽力していきたいと思います。
     改めて、ご参画いただいている有識者メンバーの方々に心より感謝申し上げます。

    主任研究員・乾直行
     個情法の提言に関して感想を述べたい。この提言の取りまとめは難航した。個情法の中核たる本人同意には問題があり、これをどうにか見直すべきだ、という点については当初より一致が見られた。しかしその後、本人同意に代わる新たな本人保護手段(プライバシーテック等)を議論する中で、そもそも個情法の目的は何なのか(個情法が保護しようとしているものは一体何なのか)が不明確だ、それが明らかでなければ本人同意のあり方は論じられないのではないか、という意見が多数を占めるようになる。本人同意という小さな論点が、個情法とは何かといったとてつもなく大きな論点に繋がっていった格好だ。結局、リスクベースで目的を捉え直していくという方針は定まったものの、何がリスクなのか、それを誰がいつどう決めるのかといった次なる論点については明確な答えを用意できなかった。また、当初課題であった、本人同意に代わる新たな本人保護手段についても、何が望ましいのかについても一致を見なかった。今回の提言が、議論の必要性を論じるのみで、代替策を提案できなかったのは以上の経緯による。
     ただ、本人同意に問題があることは一致しているので、次年度以降もこのテーマの検討は継続したい。仮にリスクベースで捉え直すとするとき、問題となるリスクを洗い出すには、また社会全体を眺めて何が本人同意に代わる新たな本人保護手段として望ましいかを考えるには、様々な角度からの検討が不可欠である。これができるのは、各分野の第一人者が参加するこの研究所を置いてほかにない。

    この記事に関連する研究会メンバー及び研究員

    ※順不同、敬称略

    その他の参加者

    ※順不同、敬称略

    新舎千恵(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士/パートナー)

    その他のレポート