プロトタイプ制作研究所ロゴ

News

ニュース

  • 活動報告

2025/2/20

DX、国家戦略特区、地域活性化―「札幌市の可能性」トークセッションレポート

    プロトタイプ政策研究所所長の落合孝文、研究会メンバーのクロサカタツヤ、東博暢が2025年1月30日(木)に行われた札幌市の職員等を対象とした勉強会に登壇しました。同イベントには、福岡地域戦略推進協議会事務局長の石丸修平氏、札幌市まちづくり政策局長の浅村晋彦氏も参加し、デジタル化、国家戦略特区など、地域活性化に関する様々なテーマで議論が展開されました。以下はその要旨です。

    「サイバーフィジカル時代の歩き方」-地方都市が実現すべきDXや地域デザインとは

    研究会メンバーのクロサカタツヤが、これからの地方都市が実現していくべきアクションについて解説しました。以下要旨です。

    DX、国家戦略特区、地方活性化「札幌市の可能性」トークセッションレポートの画像、DXとは何か

    DX、GXはゴールではない。デジタルから逃れることはできないと考えている。一方で、対応しなくていいということも起きない。デジタル化していくことは人間にとって初めて体験することであり、連続的な運動ととらえる必要がある。1つ1つ階段を上っていくことがデジタルトランスフォーメーションである。

    DX、国家戦略特区、地方活性化「札幌市の可能性」トークセッションレポートの画像、空間のDX

    今はデジタルツインも出てきている。例えば5GやIoT、AIはこのデジタルツインに集まってきている。身体、物理的なものへデジタルが入り込んでいくことが今後続いていく。これは効率化の世界ではない。コスト削減に本質は無く、本来は機会の拡大に向かい合うべきである。そのためには空間をいかにデジタル化していくか。今いるこの部屋、全くデジタル化されていない。そうすると全くコントロールができず、例えば温度などは人間の感覚だけで調整されている。

    DX、国家戦略特区、地方活性化「札幌市の可能性」トークセッションレポートの画像、ステークホルダーの視点

    「国家戦略特区」という看板はワクワクするので、かっこいいことをやりたいと感じる。だが、うまくかみ合っていないのはなぜかと考えると、ステークホルダーの視点が足りていないのではないか。当事者が自分の思いを持って取り組むことも重要な一方で、その取り組みに影響を受ける人が、早くキャッチアップしていくことが重要である。そのためには、影響を受ける人が誰なのか特定する必要があるが、それができていない。

    DX、国家戦略特区、地方活性化「札幌市の可能性」トークセッションレポートの画像、取り組みの構造化・体系化

    取組の構造化、体系化が必要である。多くの人が関わる長い期間のプロジェクトを持続的に進めるには仕組化していかないといけない。日本人は仕組化が苦手である。例えばアメリカからきている生成AIのテクノロジーを取ってみると、アメリカ人は日本で言われるほどには仕事で生成AIを使っていない。フレームワーク文化と言われるほど、非常に高度に仕組化されているため、生成AIを簡単に導入する余地がない。その保守的なところにも良さがあり、他民族の人が仕事をしても、ワークする。日本はそれがなさすぎるので、仕組みを作る必要がある。

    一方で、内発的な取組は「現場の力学」という名の下で発生する惰性に飲み込まれやすい傾向があり、頼りすぎない方がいい。代わりに「個人の日常的な感覚」を活かすと良いのでは。実は日本人は個人としてすでにDXを実現している。日常の一歩先に新しい体験がある、という理解の醸成が必要だろう。

    札幌をさらに魅力的な都市にしていく方法―クロストーク要旨

    研究会メンバーの東をファシリテーターとし、石丸氏、浅村氏、クロサカ、落合の5名でクロストークも実施しました。以下はその要旨です。(敬称略)


    東:福岡はワクワクしてお仕事をされている印象だ。規制改革ネタが出てきたり、好事例として語られることが多いが、そこに至るまでのまちづくりの制度設計でどこに留意していたか。

    石丸:私が所属している福岡地域戦略推進協議会(以下、FDCという)という組織は、システム化という意味では敢えて緩く運用していて、いろいろな人たちの知見や気づきを現場のレベルから政策に繋げることをしている。また九州大学で15年近く、地域政策デザインスクールで政策に関わる人を育成している。具体的な自治体の政策課題について7カ月で政策提言し、実装までをやる。それをFDCが支援する仕組み。アルムナイが500人近くいる。

    もう一つが構想。マクロでものを考えることが大事である。個別の施策をマクロで見たときにどうしていきたいのか。もう一つは時間軸をどうとらえるかという視点を大事にしないといけない。FDCは福岡都市圏を起点とした都市圏の団体だが、九州というリージョンでどうしていくかを、仕組み、人材、構想を作って動かす。

    DX、国家戦略特区、地方活性化「札幌市の可能性」トークセッションレポートの画像、登壇者

    東:規制改革や政策の観点から考えると、今後の社会では、アジャイルガバナンスとしっかりした仕組みのバランスをとった課題解決をしていく必要があるが、どこをどうマネージすると良い規制改革提案に繋がっていくと思うか。

    落合:アジャイルガバナンスとシステムの相関についてだが、日本の仕事は仕組化されていない部分も大いにある一方で、行政の仕事は割合仕組化されていると思料する。しかし、リスク管理が硬直化していて、新しい技術を使わないといったことも生じる。新しい取組をしようとしたときに、なかなか取り組めない。

    デジタル規制改革の際には、あまり細かいことを決めない方がいい。定番になっている方法があり、性能規定化という。例えばドローンでは目視点検することがあるが、元々、国土交通省の中には、技術カタログのようなものを出していた部局もあり、規制改革推進会議で取り上げた時は、国土交通省の他の部局や別の省庁にもカタログ作成を真似るように、という議論を行った。デジタル臨時行政調査会で事例を見直した時も、国土交通省のカタログのようなものを、いろいろな分野で出した方がいいのではないかという意見が出ていた。細かく規則を定めると実施できない技術が増えてしまうが、一方で、全く決めていないと自分では判断しにくいという方々多い日本では、抽象的な目的だけでなく、事例集やガイダンスを組み合わせることで、日本的にはちょうど良い塩梅になる。

    また、コミュニティができてくることは非常に大事である。福岡と並んで新しいことに積極的なのはつくば市だが、つくば市もコミュニティができているように思う。規制改革をするのか、組織づくりをするのか、人づくりをするのか、というのは鶏卵問題になるときもあるが、前向きな人が集まる場を作ることで、情報交換がしやすくなり、結果取り組みが進みやすくなってくる。規制改革自体を目的にすべきでなく、組織としても新しいことにどうすれば取り組めるか考えることで、次第に前に進むと思料する。

    東:札幌市では、こういう地域にしたい、こういうことを解決したい、ということについて、現在どんな認識をされているか。

    浅村:札幌市においても人口減少局面が始まり、我々の世代から次世代に向けて、どのようにまちのバリューを高めて引き継いでいくかが問われている。これは我々行政だけで考えるには限界があると感じているところだ。

    しかし、まちのビジョンを共に考えるコミュニティの形成がまだ十分とは言えず、工夫が求められている。福岡は地域の成長に民間のコミットメントがあり、その影響で行政側もよりクリエイティブな発想が生まれやすいのではないか。なぜ既存の制度があるのか原点に立ち返りながら、これからのまちをどうするかを構想する、そのような複合的な発想を、公務員も持つ必要があると思う。

    そして、民間の現場やビジョンと結びつけることで新たな発想が生まれてくる。そうしたプロセスの中から規制緩和のアイデアも自然と生まれてくる。本日の議論を通じて、改めてその点が腑に落ちた。このような想像力を働かせながら、行政内部での議論を重ねると同時に、民間との対話を積極的に進めていきたい。

    DX、国家戦略特区、地方活性化「札幌市の可能性」トークセッションレポートの画像、登壇者画像2

    東:たしかに、自分の家族に説明して「いいね」と言ってもらえるものを作らないといけない。北海道大学も改革されているが、アカデミアを中心に人材を動かすモデルが日本でも出てきている。アメリカで過ごしているクロサカ氏から見てどうか。

    クロサカ:アメリカは大学が企業っぽい。どれだけ予算を持ってこられるのか、どれだけ大きなプロジェクトを企業と実施できるかが、専任教員の評価に紐づいているくらいである。やや行き過ぎていると批判されることもあるほどだ。

    一方で、お金やプロジェクトや人を引っ張って来ると、面白い人が集まるというのも事実である。魅力的な人を外部から引き込み、地元と何かを始めることは最初のアクションとして重要だ。

    ただし、その「魅力的な人」はいずれは生み出して育てないといけないし、これには時間がかかる。そういう意味では大学はすごく使いやすい。大学の先生や研究者になれるというと、とんでもなく好条件で人を引っ張ってこられる。そして長い時間コミットし続けると札幌の良さがわかり、他の人も呼んで育てるという流れができるとよい。

    東:「まちづくり」と言うが、その場所に自分も住みたいと思うかが重要である。外からの人も「ここに住むならどういうまちづくりをするか」という点までコミットしないと、上滑りの制度になる。

    行政は部局それぞれで所管されている業務を取りまとめられているが、以前デジタル庁の村上氏と話した時に、「政府があえてウェルビーイングというぼやっとした概念を出したのは作戦で、所管部局がない。お互いでアイデアを出し合う効果があった」と言っていた。部局ではなくチームでないと解決できない。役所内だけでは無理なので、サードプレイス的な、FDCのような組織が担って行き来する。人の行き来も福岡は面白い。

    石丸:FDCは一つの場だが、それだけでない多くのコミュニティがあり、それぞれが人単位でつながっている。話は変わるが、先程落合氏の話を聞いて、規制改革から入るのはキツイと改めて思った。使う頭が違う。

    落合:そのとおりで、規制改革から入ろうとすると難しい。内閣府は特に分野を限定せずに地域単位での規制改革の提案を募集しているが、仮に規制改革の例として「ドローン」という言葉が書いてある場合があったとする。その際に、「ドローン事業は課題があるらしいと聞いていて、多分ドローンは規制で実装出来なそうだから、ドローンがうまく利用できないことは規制が原因であると書いてみれば、80点くらいの評価が付きそうとも思い、ドローンの規制改革が必要と書いておこう」と考えることがあるようである。そこに具体的な課題はないかもしれないが、例示で書かれているテーマは、何か書いてみないと落第点になるかもしれないから、とりあえず書いて出しておこう、といったこともあるように見えている。こうした思考で出た文書は、審査する側からするとつまらないことが書いてある、と判断されがちである。

    このような「ドローンが利用できない」とされる場合でもドローンの利用が一律禁止をされている状況でなく、何等か法整備をされているタイミングであれば、一度試してみてはどうか。実際に飛ばしてみようとしたうえで気づいた適切な操縦方法や、飛行場所であったり、具体的な課題が示されることが大事である。

    今回の例のように「やってみたら面白いこと」を広げていくことが重要である。そのような取り組みを進めていくと、日本は法律ではなくても通達などでも細かい要求が色々と記載されている中で、何らかのルールとぶつかることがある。どう説明するかには発想の転換が必要なことはあるが、面白いことを進めた上でたどり着いたものであれば、面白さと、その中に必要性と許容性が埋め込まれていると思料する。それを見つけていただけるとよいのではないか。

    石丸:今のお話から、正面から政策を作る方が楽なのではないかと思う。新しいことをやろうとしたときに、政策を作って実装するときに引っかかるところが出たら規制緩和(のネタになる)。

    東:本来のどういうまちにしたいか、から政策を作って。特区ネタを何か出さないといけない、と出そうとすると、本質からずれていってしまうように思う。

    落合:規制改革をやりたいからという提案を考えた場合に、ダイナミックプライシングという言葉は良く出てくることがあるが、では値段を上げたいか下げたいかが決まっていない、ということもありうる。

    例えば値上げをするのであれば、公共交通として市民が安価にアクセスできないことが良いのかが論点になるかもしれないし、値下げをするのであればむしろ事業者の持続可能性や、利用者間の公平性などが問題になるかもしれない。

    このように何がしたいのかわからないと、なぜこの新しい取り組みを行っても良いかを考えにくくなり、結局、サポートの仕方がわかりにくくなり、助けられないという部分がある。このため、まず本当に何がしたいのかから考えず、規制改革ありきで考えてしまうと、規制を見直すための制度的な課題も特定できないことも生じる。

    東:よくあるのが、規制改革で個人情報やプライバシーが問題だと皆さんよくいうが、どこの何が問題なのか。

    落合:AIについてはリスクマネジメントのやり方をうまく考えてください、ということがあるが、デジタル技術を利用できる範囲であれば、現時点での技術レベルのAIの実装の関係であると、法制度側で問題になるものはかなり限定的である。

    今実装しようとしている技術システムは規制に抵触するものではなく、なんとなく怖い、なんとなくレピュテーションリスクがありそうな気がする、というものが非常に多い。規制の問題と言うよりは、怖そうなものと付き合っていけるか、リスクをしっかり分析することができるかが重要である。

    怖そうにみえるもので、実際に怖い場合もあるが、近くに寄ってリスクを具体的に分解してみると、どこが怖いか少しずつ分かってくる。そうするとどのリスクを受容すればいいか、どのリスクを回避しないといけないかが見えてくるので、対策方法が見えてくる。こういう取り組みが重要だろう。

    DX、国家戦略特区、地方活性化「札幌市の可能性」トークセッションレポートの画像、会場画像

    浅村:本日は、このようなスペシャルメンバーにお集まりいただき、貴重なお話を伺うことができ、大変嬉しく思う。専門的な内容も含まれ、分かりにくい部分もあったかもしれないが自分の仕事や生活に立ち返り、札幌で働く中でこのまちをどうしていきたいかを常に考えることが重要だと改めて感じた。

    これまでの仕事を見直すうえでも、規制緩和やコミュニティづくりでも、行政内部でコミュニケーションするだけではなく、様々なセクターの方々と仕事上の関係を超えて対話を進めることが新たなひらめきにつながると思料する。こうした機会を活用いただき、皆さんそれぞれが得た貴重なヒントを自分なりに咀嚼し、次に生かしていただきたい。そうした一人ひとりの行動が、札幌のまちをより良くすることにつながるはずだ。本日の議論をしっかり受け止めて、札幌をより良くしていければと思う。

    その他のレポート