プロトタイプ制作研究所ロゴ

News

ニュース

  • 活動報告

2026/3/23

地域戦略と変革人材:北海道と福岡の対比から見る日本の未来ー2025年9月12日北海道大学共催シンポジウムレポート

    2025年9月12日、北海道大学にて「北海道・札幌のグランドデザインを考える」シンポジウムを開催しました。本シンポジウムでは、地方創生の新たな展開や地域のポテンシャルをめぐり、「地方創生2.0」など政府政策の動向、地方創生の取り組みが官民ともに活発な福岡の事例、そして地方創生の取り組みを加速させるにあたり、北海道の地理的優位性をはじめとする大きな可能性について活発な議論が行われました。以下に要旨をまとめます。

    1. 政府の動向:地方分散と広域連携の推進

    政府は「地方創生2.0」を掲げ、多極分散型の国づくりを推進している。目的は、一極集中の是正と、地域の自立的成長の促進である。

    地方創生2.0の5本の柱により、一極集中の是正が期待されている

    • 官民が連携し、地域の拠点を創設する動きが活発化している。

    • ハード面だけでなく、ソフト面での支援を一体的に行う方針が示されている。

    広域連携の制度化

    • 2025年には「広域リージョン連携」という概念が具体化され、総務省内に「広域リージョン連携の枠組み」の創設が明記された。

    • これにより、府省庁を横断した支援体制が構築され、地域の成長とイノベーションを促進するための政策パッケージが提供される見込みである。

    背景にある経済界の動き

    • 経団連が提唱する「バーチャル道州制」構想も民間からの重要な指摘になっている。これは物理的な県境に縛られず、デジタル技術を活用して広域連携を進めるという考え方である。

    2. 地域格差の現状と各地の取り組み

    地方分散政策が進む一方、地域間での取り組みの進度には違いが見られる。西日本の自治体では特区制度やスーパーシティ構想や新規案件への提案が活発な傾向が見られ、国家戦略特区の指定も西日本が多いといった状況にも反映されている。北海道・東北では研究開発を社会実装につなげる取り組みをさらに拡充する余地があると指摘された。

    提案件数の差異と背景

    福岡では行政と民間が連携した積極的な提案活動が進んでいる。一方、北海道では豊富な研究リソースや北海道大学をはじめとする高い研究レベルを誇る研究機関との連携を模索しつつ、今後は社会変革につながる実践的な仕組みづくりが期待される。

    気候変動を踏まえたポテンシャル

    気候変動による環境変化の中で、北海道の冷涼な気候は生活・ビジネスの面で注目されており、持続可能な地域づくりの可能性が高まっている。

    3. DX時代の変革を担う人材と組織、アンラーニング

    地域の変革を実現するためには、それを担う人材像と、彼らが活躍できる組織文化の変革が不可欠である。議論では、従来の専門特化型人材とは異なる能力が求められる点が強調された。

    求められる「縦横統合型人材」の4つの能力

    産業構造が縦割りから、デジタルを基盤に横断的につながる形へと変化する中で、変革リーダーだけでなくその「橋渡し役」を担い、変革を推進する人材が必要となる。


    能力

    説明

    統合的視座

    外部の視点を取り入れることで、自らの地域や組織の価値・課題を客観的に理解する能力。海外旅行で日本の良さを再発見するように、外に出ることで(外の視点に立つことで)見えるものがある。

    共感力

    自分とは異なる考えを持つ人々や、異なる分野の専門家の意見を深く聞き、対話する能力。多様なステークホルダーが協働する上で基盤となる。

    翻訳的コミュニケーション能力

    専門家同士でしか通用しない言語や概念を、分野の異なる人々にも理解できるよう「翻訳」し、橋渡しをする能力。異業種・異文化間の連携を円滑にする。

    触媒的リーダーシップ

    役職や権威に依存せず、人と人、組織と組織を繋ぎ、化学反応を促進する半径5メートルのリーダーシップ。自らは目立たずとも、その存在によって全体の成果を何倍にも高める。

    「アンラーニング」の重要性

    変革のためには、新しい知識を学ぶ(ラーニング)だけでなく、既存の成功体験や固定観念を意図的に棄却する「アンラーニング」が極めて重要である。

    • 目的の再確認: 「何のためにこれをやっているのか?」という根本的な問いに立ち返り、手段の目的化を防ぐ。

    • 前例踏襲からの脱却: 過去のやり方が、人口減少やデジタル化といった新しい環境でも有効であるかを常に見直す意識が必要。

    • 組織的な取り組み: 個人の意識改革に留まらず、組織としてアンラーニングを許容し、評価する仕組みを構築することが求められる。

    4. ケーススタディ:福岡地域戦略推進協議会(FDC)の成功要因

    福岡では「福岡地域戦略推進協議会(FDC)」が、官民学の連携を推進するプラットフォームとして機能している。

    組織構造と機動力

    • 法人格を持たない任意団体であるため、行政の枠組みに縛られず、アジャイルで機動的な活動が可能。

    • 官民学から約240の団体が会員として参加。トップ(麻生豊会長、九大総長、福岡市長)のコミットメントを得つつ、現場には高い自由度が与えられている。

    「調整機能」としての役割

    • FDCでは関係者間合意形成を重視しつつ、プロジェクトを前に進める「裏方」としての役割を担っている。

    • 一方でプロトタイプを動かし、迅速に課題解決やプロジェクト推進を進めている

    継続による信頼構築

    • 設立から15年間の活動を通じて、地域の多様な主体との間に強固な信頼関係を構築している。

    地域特性の活用戦略

    • 「東アジアのビジネスハブ」などの明確なポジショニング戦略を打ち出し、地域のアイデンティティを形成している。

    5. イノベーション創出の鍵:多様性と「場」の設計

    持続的なイノベーションには、多様な人材が交流できる「場」の設計が不可欠である。専門分野を超えた対話と協働が、地域の創造力を高める。

    多様性の価値

    • 単一分野に深い知見を持つ人や様々な分野につながりを持つ人など、多様性を重視する「ダイバーシティの視点」が重要になる。

    • 今後は人工知能や機械とうまく連携して効率化したり、多様な視点を提示したりするような環境を作っていく必要がある。

    外部評価の重要性

    • 地域の持つ価値や魅力(例:観光資源、伝統技術)は、内部の人間にとっては「当たり前」すぎて気づかれないことが多い。

    • 異分野の専門家や他の地域の人々といった「外部の視点」を積極的に取り入れ、自らの価値を再発見し、評価してもらう仕組みが不可欠である。

    連携を促す「場」の創設

    • 多様な才能が集い、対話し、新たな価値を共創する「場(プラットフォーム)」が認知的な多様性につながり、イノベーションの土壌となる。

    6. 北海道の潜在能力と今後の展望

    最後に、北海道の潜在能力と今後の展望を示したい北海道は、国内外の環境変化を追い風に、大きな飛躍を遂げるポテンシャルを秘めている。

    気候変動時代の地理的優位性

    • 本州の気温上昇、世界的に見ても大都市の高温化をはじめとする気候変動が深刻化する中、北海道の冷涼な気候が環境負荷の低い都市づくりに貢献する可能性を持つ。

    • 広大な土地は、自動運転やドローン、スマート農業といったDX技術の大規模な社会実装に最適な環境を提供する。(また、大規模農業を導入成功させてきた実績もある。)

    国家戦略的な産業集積

    • ラピダス(次世代半導体)、データセンター、GX(グリーン・トランスフォーメーション)関連投資が集中しており、他の地域よりも産業集積への取り組みが進んでいる点では、アドバンテージがある。

    • これらの先端産業と、AI・ロボティクスを活用した一次産業(農業・漁業)の高度化を組み合わせることで、独自の産業エコシステムを構築できる可能性がある。(例えば、デンマークではすでに一次産業が大規模化、機械化し、一次産業従事者が高所得層になってきている。)

    官主導型連携の可能性

    • 北海道は国家的な政策投資が先行している。また、従来より官主導の取り組みも比較的多い。

    • 省庁横断的な支援を積極的に活用し、(地元の)官が主導して連携の「場」を作るアプローチが考えられる。

    その他のレポート