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2026年6月18日

オンラインカジノ対策をめぐる法的論点の整理

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
プロトタイプ政策研究所

  • 情報通信

 オンラインカジノ対策をめぐる近時の議論は、違法サイトへのアクセスをどのように抑止するかという個別技術論にとどまらない。総務省「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」(座長:曽我部真裕。以下「検討会」という。)の中間論点整理(2025年(令和7年)9月)、議事概要及び配布資料を通覧すると、第一に、オンラインカジノを刑法上どのように位置づけるべきか。第二に、削除、支払抑止、ジオブロッキング、依存症対策等を含む包括的対策の中で、ブロッキングをどのような順序・位置づけで構想すべきか。第三に、アクセス抑止のうち特にブロッキングが通信の秘密や知る自由・表現の自由に及ぼす制約をいかなる根拠と手続の下で正当化し得るか。これら三つの論点が相互に連関していることが明らかである。以下では、これらの資料を踏まえ、現時点での主要な法的論点を整理する。

1.オンラインカジノの刑法上の位置づけ

 オンラインカジノをめぐっては、海外で合法的に運営される事業者の存在や、日本国内に競馬や競輪等の公営ギャンブルが存在することを理由に、なお「グレー」であるとの理解がみられる。しかし、検討会の配布資料及び議論の整理からは、このような理解は採られていないことがうかがわれる。すなわち、「賭博」(刑法第185条)とは、2人以上の者が、偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為をいうとした上で[1]、オンラインカジノも「賭博罪の構成要件に該当する」との方向で整理されている[2]

 ただし、違法性の認定は、それ自体として重要である一方、アクセス抑止措置の可否は別途検討を要する。オンラインカジノが賭博罪に該当するからといって直ちに強いアクセス抑止が許されるわけではなく、刑法の場所的適用範囲(同法第1条)、賭博罪の保護法益及び公営ギャンブルとの関係等を検討する必要がある。まず、刑法第1条は「日本国内において罪を犯した」ものについて適用があるとしているところ、オンラインカジノは事業者及びサーバーが海外にあるため、そもそも日本の刑法の適用があるかを検討する必要がある。この点、通説的見解は、構成要件該当事実の少なくとも一部、すなわち行為又は結果の一部が国内で行われ、又は発生していれば日本の刑法の適用があるとしている[3]。オンラインカジノは、利用者が日本国内においてスマートフォン等を操作して「賭博」を行っている以上、賭博行為の一部が日本国内において行われたといえ、日本の刑法の適用がある[4]

 次に、刑法の適用があり賭博罪の構成要件に該当するとしても、賭博罪の保護法益との関係も検討する必要がある[5]。この点、賭博罪の保護法益について、判例及び通説的見解は「勤労の美風」、すなわち勤労によって財産を取得するという健全な経済的風俗としている[6]。この法益はあくまで日本における法益であるため、国外で法益侵害が生じたとしても賭博罪は成立しない。もっとも、日本国内から賭博行為に参加できる場合は、日本における法益が侵害されているといえるため、なお賭博罪が成立する[7]

 また、公営ギャンブルは、賭博罪の構成要件に該当し得るが、特別法に基づき運営されている場合には正当業務行為(刑法第35条)として例外的に違法性が阻却される。これに対し、オンラインカジノにはこのような特別法が存在しないため、例外的に違法性が阻却されることはない。

 これらを踏まえると、オンラインカジノを単に「グレー」と位置づけることは困難であり、日本国内から賭けに参加する利用者については賭博罪又は常習賭博罪が成立し得る。

 

2.包括的対策の中での位置づけ

 オンラインカジノ対策はブロッキングのみによって解決されるものではない。検討会を通じて一貫して示されている前提は、オンラインカジノ対策は一つの措置に依拠してはならず、関係主体が協力して包括的に講じるべきだという点である。これは、オンラインカジノが、依存症の深刻化や家族被害等の社会的影響を伴うとともに、不確実な報酬、ニアミス効果、素早い反復プレイ等の行動科学的要素により利用者の意思決定が影響を受けやすい構造を有しているため、単一の規制手段のみでは十分に対応し難いからである[8]

 この包括的対策は、端末、ISP、検索、広告、サイトというレイヤーごとに、フィルタリング、ブロッキング、警告表示、削除・検挙等の複数の対策を検討することを意味する。

 包括的対策の中でも、ISP(インターネットサービスプロバイダ)によるブロッキング、すなわち利用者の同意なく特定のIPアドレスへのアクセスを強制的に遮断する手段は、一部のオンラインカジノの利用者だけでなく、それ以外のインターネット利用者全ての接続先等も確認の上遮断するものであるから、通信の秘密(電気通信事業法第4条第1項、第179条)を侵害し、手法によっては「知る自由・表現の自由」(憲法第21条)に制約を与えるおそれがある。そのため、ブロッキング以外のより権利制限的でない手段を進め、それでもなおオンラインカジノへのアクセスが著しく減少しない場合に、追加的な対応としてブロッキングを検討する。したがって、現時点での議論は、ブロッキング単独論ではなく、先行措置の成果と限界を見極めながら補充的手段を詰めていく段階にあると理解すべきである。

 ただし、ブロッキングを含む各対策を検討するためには、その前提となる立法事実を明確にする必要がある。特に、オンラインカジノに係る依存症の実態、利用者層、流入経路、若年層への影響、家族被害、支払・決済の実態、既存対策の効果等については、なお十分に解明されていない面がある。したがって、大規模かつ堅牢な調査を迅速かつ継続的に行い、各対策の必要性・有効性・許容性を支える立法事実を蓄積する必要がある。こうした立法事実の把握は、アクセス抑止を所管する総務省のみで完結するものではないため、捜査・執行や被害者救済を担う警察庁、依存症患者及びその家族への支援を担う厚生労働省、送金・決済対策を担う金融庁、関連する資金決済や周辺政策との調整に関わる経済産業省等が、総務省と緊密に連携し、横断的な執行・検証体制を構築する必要がある。

 

3.通信の秘密・知る自由との関係

 以上のように、オンラインカジノ対策は包括的対策として講じられるべきであり、包括的対策の中でもブロッキングは、通信の秘密を侵害し、手法によっては「知る自由・表現の自由」に制約を与えるおそれがある。通信の秘密侵害は刑事罰の対象となるところ(電気通信事業法第4条第1項、第179条)、法令上の明確な根拠がないままブロッキングを実施する場合には、刑法上の緊急避難(刑法第37条第1項)によってその違法性を阻却できるかが問題となる。そこで、中間論点整理では、ブロッキングは、①ブロッキング以外のより権利制限的ではない手段を尽くした上でなお深刻な被害が減らないこと及び対策として有効性がある場合に実施を検討すべきものであること(必要性・有効性)、②ブロッキングにより得られる利益と失われる利益の均衡に配慮すべきこと(許容性)、③仮に実施する場合、電気通信事業者の法的安定性の観点から実施根拠を明確にすべきであること(実施根拠)、④仮に制度的措置を講じる場合、どのような法的枠組みが適当かを明確にすべきであること(妥当性)、という4つのステップに沿って検証することが必要であると示された[9]。もっとも、オンラインカジノについては、児童ポルノのように、第三者に対する明確かつ深刻な人権侵害を回避するための措置と直ちに位置づけることは難しい。児童ポルノの場合には、児童の心身に対する重大かつ継続的な権利侵害を回避する措置として位置づけやすいのに対し、オンラインカジノでは、利用者は、依存症等の観点からは保護対象となり得る一方で、自ら違法な賭博行為を行う主体でもあるため[10]、オンラインカジノを誰に対するどのような危難として把握するのかが一義的ではないからである。そのため、ブロッキングを緊急避難により正当化し得るかを検討するに当たっては、誰のどのような危難を避けるための措置なのか、また、賭博罪の保護法益にとどまらないオンラインカジノ固有の弊害をどのように評価するのかを明確にする必要がある。③実施根拠及び④妥当性については、①必要性・有効性及び②許容性が肯定された場合に問題となる制度設計上の論点であるため、以下ではブロッキングを実施し得るか否かの前提となる①必要性・有効性と②許容性を主に検討する。

 まず①必要性・有効性についてである。必要性は、過去の児童ポルノでのブロッキングにおいて、国内における児童ポルノサイトの運営や情報の頒布に関与した者の取締りに加え、海外のサイト運営者に対する削除要請等ブロッキング以外の手段が一定程度講じられている中にあってもなお被害が減らないという実態があり、その最終手段としてブロッキングが導入されたという経緯を踏まえて要求されている[11]。そのため、オンラインカジノにおいても、まずはブロッキング以外のより権利制限的でない方法で対策が可能かを検討するべきである。特に、オンラインカジノは、児童ポルノとは異なり、賭けに伴う金銭の移動があるため、この金銭の移動を抑止することにより、実効的な対策が可能であるかについては慎重に検討する必要がある。具体的には、オンラインカジノにおいては金銭の移動の際にクレジットカード、銀行口座、収納代行サービス等が使用されているという実態があるところ、これらの事業者においてオンラインカジノと疑われる先への金銭の移動を止めることができないかを検討する必要がある[12]。すなわち、オンラインカジノに係る金銭移動に関与する決済代行業者・収納代行業者等については、オンラインカジノ運営への関与の程度や認識の有無に応じて、賭博場開張等図利罪の共犯・幇助の成否が問題となり得る[13]。また、賭博又は賭博場開張等図利によって得られた利益については、犯罪収益の隠匿・収受等や没収・追徴の問題も生じ得る[14]。支払抑止や刑事法上の対応を政策提言として論じる趣旨ではないが、これらの手段がブロッキングよりも権利制限の程度が小さい手段として機能し得る以上、その手段を検討しないまま、直ちにブロッキングの必要性を肯定することはできない。その上で、こうした他のより権利制限的でない手段を尽くしてもなお実効的な抑止が困難である場合に、ブロッキングを検討すべきである[15]。そして、必要性が認められるとしても、対策としての有効性がなければ、ブロッキングを採用することはできない。これは、緊急避難における補充性と密接に関連するものの、そもそもブロッキングがオンラインカジノへのアクセス抑止や依存症被害の防止に効果的な手段といえるのかという手段適合性の観点から要求されている。もっとも、オンラインカジノについて、児童ポルノサイトのブロッキングと同程度の有効性が直ちに認められるわけではない。すなわち、iPhoneのプライベートリレー機能、CDNやVPNによる迂回によってブロッキングを回避することは容易であるところ、特にiPhoneのプライベートリレー機能は、児童ポルノ及び海賊版サイトの検討の際には存在しなかったため、オンラインカジノに対するブロッキングは有効性を欠くのではないかとの指摘がある[16]。一方で、カジュアルユーザーや若年層がギャンブル等依存症になる前の対策が重要であるところ、ブロッキングによってこれらの者がオンラインカジノを利用することを抑止することが可能であり、ひいてはギャンブル等依存症になることを未然に防止するなど、予防的効果があり得るとの考え方もある[17]。このため、有効性については引き続き検討が必要である。

 次に、②許容性は、緊急避難における利益衡量の観点から要求されるところ、賭博罪の保護法益を勤労の美風とする場合、この抽象的な保護法益のみで通信の秘密の侵害を正当化することは困難である。オンラインカジノについては、賭け額の急速な高額化、若年層を含む利用者の依存症化、借金・破産・家庭内不和等を通じた家族や生活基盤への被害、スマートフォン等を通じて時間・場所を問わず反復継続的に利用できるというオンライン特有の危険性が指摘されているため、ギャンブル依存症被害の防止、若年層保護、家族・生活基盤への被害の防止といったオンラインカジノ固有の弊害もブロッキングにより保護される利益として検討する必要がある[18]。また、児童ポルノは児童の心身に対する生涯にわたる回復しがたい被害という被害の深刻さを踏まえ、総務省の有識者検討会等において緊急避難が認められるとの考え方が採られた一方、海賊版サイトについては、著作権者の経済的利益のために通信の秘密を制限することについて否定的な見解が示された[19]。オンラインカジノは、児童ポルノのように全く落ち度のない第三者に対する権利侵害と同視することはできない[20]。他方で、海賊版のように単なる財産的利益の侵害に尽きるものでもなく、依存症や生活基盤への被害といった複合的な弊害を伴う点に特徴がある。ギャンブル依存症被害の防止もブロッキングにより保護される利益として考慮する場合、これらの事案も踏まえた上でオンラインカジノ固有の弊害を具体的に示し、ブロッキングによって得られる利益の方が大きいといえるのかを検討する必要がある。なお、先述のとおり、オンラインカジノの利用者は、依存症等の観点からは被害者であるが、自ら違法な賭博行為を行う主体でもあるため、どの程度保護法益を重視する必要があるかについては慎重に検討する必要がある。したがって、賭博罪の伝統的な保護法益のみではブロッキングの許容性を基礎づけるには足りず、オンラインカジノ固有の弊害も考慮する必要がある。もっとも、これらの弊害は、児童ポルノや海賊版サイトの際の弊害と同視できるものではないため、オンラインカジノ固有の弊害を考慮し得るとしても、それだけで直ちに通信の秘密や知る自由・表現の自由といったブロッキングにより失われ得る利益を上回るとはいえず、慎重な利益衡量が必要である。

 

4.主要論点

 以上の検討を踏まえると、今後の主要論点は少なくとも次の三点に整理できる。

 第一に、オンラインカジノ規制の基礎づけを、賭博罪の保護法益のみで足りるとみるのか、それとも依存症等を含む現代的立法事実により補強すべきか、という点である。この点についての現時点での到達点は、オンラインカジノの違法性自体は相当に明確である一方、ブロッキングを正当化する利益としては、賭博罪の伝統的な保護法益のみでは足りず、依存症被害の防止、若年層保護、家族・生活基盤への被害の防止といったオンラインカジノ固有の弊害も考慮する必要がある、という点にある。

 第二に、通信の秘密や知る自由・表現の自由への制約を、いかなる実体要件・手続要件の下で許容し得るか、という点である。この点についての現時点での到達点は、ブロッキングが通信の秘密に外形的に抵触し得る措置である以上、事業者の自主的な取組や刑法上の緊急避難に依拠した運用には限界があるため、明確な法的根拠の下で、義務付け主体、遮断対象の限定、補充性・相当性等の実体要件、手続要件等を制度上明確にする必要がある[21]

 第三に、ブロッキング以外の対策を先行させた上で、ブロッキングをどの時点で補充的手段として位置づけるか、という点である。この点についての現時点での到達点は、まず、ブロッキングよりも権利制限的でない刑事法上の対応等の手段を先行させるべきであり、それらを尽くしてもなおオンラインカジノへのアクセスや被害の阻止が困難である場合に、補充的手段として検討されるべきという点にある。

 以上の三点を総括すると、本稿の現時点での到達点は、ブロッキングを検討するに当たっては、オンラインカジノ固有の弊害を保護される利益として具体化すること、その利益と通信の秘密や知る自由・表現の自由に対する制約との均衡を検討すること、そして、より権利制限的でない手段を踏まえて補充的に位置づけることが必要である、という点にある。          

 したがって、実務の観点からは、「ブロッキングに賛成か反対か」という抽象的二分論にとどまるべきではない。どの法益を保護するために、どの手段を、どの順序で、どのような根拠の下で用いるべきかを、立法事実と比較法も踏まえて具体化することが、今後一層重要となろう。


[1] 西田典之=橋爪隆補訂『刑法各論(第8版)』(弘文堂、2025年)451頁。

[2] 検討会(第3回)議事概要21頁。

なお、オンラインカジノは、他に賭博場開張等図利罪(刑法第186条)や組織犯罪処罰法も問題となり得るが、ブロッキングとの関係で問題となるのは主に利用者との関係である。このため、本稿では、アクセス抑止との関係でまず問題となる利用者側の違法性を中心に扱うこととし、賭博罪を主たる検討対象とする。

[3] 大塚仁ほか編『大コンメンタール刑法第3版第1巻』(青林書院、2015年)83頁以下。

[4] 検討会(第3回)議事概要25頁以下、鎮目征樹「賭博罪とオンラインカジノの可罰性について」ジュリスト1619号54頁、57頁(2026)。

[5] 検討会(第3回)議事概要24頁。

[6] 大塚仁ほか編『大コンメンタール刑法第3版第9巻』(青林書院、2013年)117頁以下。

[7] 検討会(第3回)議事概要25頁。

[8] 中間論点整理4頁~6頁、検討会(第9回)配布資料9-2・小久保智淳「オンラインカジノ問題と『認知過程の自由』」8~9頁、配布資料9-3・岸本泰士郎「オンラインカジノを巡る行動科学的観点からの考察」3頁、7頁、9頁、11頁、18頁~19頁。

[9] 中間論点整理3頁。

[10] 検討会(第12回)議事概要12頁。

[11] 中間論点整理17頁。

[12] 検討会(第10回)議事概要15頁以下。

[13] 検討会(第3回)議事概要27頁。

[14] 検討会(第3回)議事概要22頁。

[15] 検討会(第12回)議事概要6頁。

[16] 中間論点整理18頁以下。

[17] 中間論点整理20頁。

[18] 中間論点整理4頁、5頁及び23頁。

[19] 中間論点整理23頁、東京高判令和元年10月30日公刊物未登載(令和元年(ネ)2753)。

[20] 検討会(第12回)議事概要12頁。

[21] 中間論点整理28頁。


【執筆者】

瀬口悠真(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 プロトタイプ政策研究所研究員 第一東京弁護士会)

落合孝文(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 プロトタイプ政策研究所所長 第二東京弁護士会)

乾直行(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 プロトタイプ政策研究所主任研究員 第二東京弁護士会)

 

【関与者】

クロサカタツヤ(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授/株式会社企 代表取締役)

稲谷龍彦(京都大学大学院法学研究科教授)

〇本提言に関するお問合せ先

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 プロトタイプ政策研究所

Email: public-inst.contact@aplaw.jp

(2026年6月18日)