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2023/3/9

「科学的介護の推進のためのオプション整備」についての意見を提出

    内閣府の規制改革推進会議(第7回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ)にて、当研究所所長の落合孝文が「科学的介護の推進のためのオプション整備」についての意見を提出しました。

    介護現場での評価枠組みは、これまで人員配置(ストラクチャー)や作業(プロセス)の評価が中心であり、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)維持など成果・アウトカムの評価は限定的でした。厚生労働省は LIFE(科学 的介護情報システム)を運用して科学的介護を促進していますが、LIFEへのインプットは限定的であり十分なフィードバックが得られていない現状があります。この意見では、科学的介護について、デジタル社会の実現に向けての理念・原則及びアジャイルガバナンス原則を前提に、制度・システム・具体的業務の総合的な見直しを提案するものとなります。

    関連記事はこちらをご覧ください。
    落合提出資料(資料2-4)の全文PDFはこちらをご覧ください。

    <以下提言全文>
    令和5年3月6日 第7回医療・介護・感染症対策WG 
    落合専門委員提出資料

    科学的介護の推進のためのオプション整備について(意見)

    渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
    プロトタイプ政策研究所所長・シニアパートナー弁護士 落合孝文

    1 介護現場でのこれまでの評価は、人員配置(ストラクチャー)や作業(プロセス)の評価が中心であり、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)維持など成果・アウトカムの評価は限定的であった。厚生労働省はLIFE(科学的介護情報システム)を運用しており、科学的介護を進める取り組みとして評価できるが、現時点では、インプットはLIFEに入力されず、十分なフィードバックされていない状況にあり、更なる改善が必要である。

    2 今後の改善に当たっては、2022年6月7日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(以下、「重点計画」という。)でのデジタル社会の実現に向けての理念・原則に(第4)おける「デジタル化を進めるに際しては、オンライン化等が自己目的とならないように、本来の行政サービス等の利用者の利便性向上及び行政運営の効率化等に立ち返って、業務改革(BPR)に取り組む必要がある」との方針を踏まえる必要がある。

    LIFEについては、現場での入力作業等(※1)に負担感が先行する状況と、結果(成績)のみが各施設にフィードバックされ有効性の検証のフィードバックに至らない状況の改善が必要であるが、この際に、現場・行政の双方にとっての利便性向上(負担軽減)と、デジタル技術を利用した業務改革に繋がる適切なフィードバックがなされるよう、制度・システム・具体的業務を総合的に見直すべきである。

    3 見直しに当たっては、重点計画に定められたデジタル原則(重点計画第5)のうち、アジャイルガバナンス原則(デジタル原則項目2)(※2)が参照されるべきである。人口減少による過疎化の進展、介護人材の減少、デジタル技術の進展のように、環境の変化が早く社会課題が複雑さや困難さの度合いを増し、先を見通しにくい現状では、旧来の日本の制度に共通する無謬性神話に囚われて問題を先送りしないこと(※3)が必要である。想定どおりの成果を得られるとは限らない現実を踏まえ、事後の見直しがあり得ることも前提に政策を立案することが重要である。

    4 下図1にも示したアジャイルガバナンスの実践に関しては、図の頂点にある「ゴール設定」及びその前提となる「環境・リスク分析」が起点となる。技術や社会の変化の速度が速い現状では、あらかじめルールを詳細に記述するモデルではなく、様々な「ゴール」(当該政策により達成すべき目標)をステークホルダーで共有し、個別介護活動のPDCA評価だけではなく、LIFEそのものを含めた制度全体を見直し続けるモデルを実装することが必要である。

    (図1)

    図1 経済産業省Society5.0における新たなガバナンスモデル検討会報告書(Ver.3)17頁図4より引用 

    5 上図の内側と外側の2つのサイクルを実施するにあたり、内側のサイクルは、現在のシステムで当初設定したゴールが達成されているかを評価し不十分であればシステム全体を改善すること意味する。この「システムデザイン→運用→評価」という小さなサイクルが、概ねPDCA(Plan-Do-Check-Act)に相当する。

    他方で外側のサイクルは、一度改善されたLIFEを含めた社会システムの運用開始後も、常に外部環境やリスクの変化を分析し、必要に応じて政策目的であるゴールも見直し続けるサイクルである。環境変化が複雑かつ早い現代においては、環境やリスクが常に変化していくことから、一度分析したこれらの要素についても、外部に対する透明性を確保しつつ、継続的に見直し続けることが必要である。

    6 現状においては、全ての介護施設等でPDCAサイクルを構築することは非現実的であることも踏まえて、施策を開始することが必要である。先行してPDCAサイクルを構築できる介護施設において得られる先端的取組結果を公的に評価し、ADLの各項目(食事、移乗、歩行など)の機能維持といったアウトカムに資する個別介護活動を特定し、他施設等に横展開できるような取り組みが求められる。

    この際には、介護報酬に関しても、アウトカムベースでの評価の選択を可能とする等のインセンティブ設計を適切に組み込むことも重要な政策オプションと考える。

    以上


    ※1 データ入力項目の重複、入力選択肢の不足、入力定義の曖昧さ、フィードバックデータの活用方法の不明確さや利用者の個人のデータ推移の確認不能等

    ※2 一律かつ硬直的な事前規制ではなく、リスクベースで性能等を規定して達成に向けた民間の創意工夫を尊重するとともに、データに基づく EBPM を徹底し、機動的・柔軟で継続的な改善を可能とすること。データを活用して政策の点検と見直しをスピーディに繰り返す、機動的な政策形成を可能とすること。

    ※3 目標と実態の乖離を発見しても、原因分析を行わず、判断が先送りになることに繋がる

    (2023年3月6日)

    この記事に関連する研究会メンバー及び研究員

    ※順不同